※ネタバレ注意
人生初のノベルゲーム(美少女ゲーム?どう分類すればいいんだ?)に挑戦しました。作品はご存知keyの新作”anemoi(アネモイ)”。初めてやるゲームタイプということで、色々と発見がありつつ、中々に楽しい体験でした。
先に総評というかグランド√の感想になっちゃうんですが、「めっちゃいい作品だけどしばらく面(カオ)見たくない…。」って感じの気持ちになってしまいました。要するに辛かった。しばらくanemoiのこと考えたくなくて最近流行りの日本をクルマで爆走するゲームで気を紛らわせていました。
今月の頭にはクリアしていたんですが、上記の理由から感想を書くのが遅くなってしまいましたので、若干うろ覚えの部分もあるかも。そこはお許しを。
というわけで感想戦です。順番は攻略した順。
【個別√】
<辻倉朱比華(スピカ)>
「最初に誰やんのがいいかな?」という話を友人としていたら、「公式曰くスピカ。」とのこと。このテのゲームでセンター張ってるキャラ最初にやんのはどうなんだろうと思いつつ、結果としては正解だったかなと思いました。
√全体として、スピカとの交流をしっかりと書きつつ、このゲームの重要な設定や世界観をいくつか開示して、謎もいくつか残してくれたので他√への期待も高まりました。
お話としては、よくある”誰に知られることもなく人々を救っている系ヒロイン”との関係についてでしたが、最終的に2人は幸せなkissをして終了、よかったなあという感じでした(←この時の俺を返してほしい)。
スピカと主人公(麦くん)の共通点として「旅を続けてきた」という点が挙げられるわけですが、そんな2人が関係を深めていくうちに「”家=帰る場所”を作る」という仕事に取り掛かる。う~ん話が上手。
スピカはそういった”思い出(戻りたい過去)”や”帰る場所”は”枷”となると考えている節がありましたが(そうあらねばならない、と自らを縛っている面もある)、終盤で真澄町での人々や帰る場所を思い出し、「麦と一緒にあの場所に戻りたい。」と自らを奮起させています。
この変化は、彼女の中で”帰る場所”が”枷”ではなく”立ち上がる力”となっていく変化として受け取れました。この辺は中々感じるものがあり、自分もある程度旅のようなものを趣味としている(100年どころか10年もしていないが)ので、”帰る場所”の存在の大きさについては共感できるような気がします。
2人の関係性については、お互いにクソボケな部分が多分にあるので、それを真澄町の人達が「ひゅーひゅー」的なノリで冷やかしたり背中を押したりするのが見ていて微笑ましかったです。
初めてこのテのゲームをやって、初めて攻略したキャラということもあり、新鮮な楽しさを味わっていた部分もあるので無意識に加点している部分もある(比較対象がない)かもしれませんが、中々に楽しめました。
<白渡小詠>
先に言っておきますが、個別√の中だと一番好きです。なのでもう少し詳細な感想を書きたいんですが、それは別の記事として書くつもりです。なのでキャラクターそのものよりは、シナリオの構成やテーマを主軸に書きます。
シナリオの話を先にすると、細かい伏線をいくつか張りつつ丁寧にそれらを回収しテーマを補強することで、シナリオ全体がしっかりとした基礎の上に成り立っているような安定感がありました。個別入ってからは麦くんと2人のロードムービー的な様相で進んでいくわけですが、その中での2人の関係性が深まっていくのも納得感があって個人的には印象良かったです(”約束”のくだりとかね)。
このanemoiの世界観は”大災害によるポストアポカリプス的世界”なわけですが、小詠のシナリオでは”未だ残る災害の爪痕”や”残された人達がどのようにそれらと向き合うか”といった、”災害”というデリケートな世界観を扱う上で必須のトピックにも触れています。
そのうえで、災害(による文明の後退)をノスタルジーの演出のための装置として扱うだけではなく、しっかりとそこにある人・生活・心といったものに向き合うことができている。これはライターの仕事が非常に素晴らしいと言えます。
また、そんな厳しい世界や災害によって傷ついた人々と相対する中で、小詠は一人の人間として、”郵便屋”として、できること・やるべきことに真っすぐに向き合っていきます。彼女のそういった誠実さや一途さは、傍にいる主人公である我々に対して、応援したいという気持ちと、どこか危うさを感じさせます。俺が守護(まも)らねば…。
使命一直線の少女、小詠ちゃんと、それを傍で見守る麦くんの心中、2人の行く末…。終盤ずっと泣きながらマウスカチカチしてました。泣かせに来てる感すごいんですが抗えませんでしたね。これがkeyの実力(ジツリキ)か…。
<総羽愛乃>
正直印象薄い…。
愛乃のキャラクターはビジュアルから想像していたよりもしっかりとした女の子、という印象を受けました。可愛らしい表情がコロコロ変わるので見ていて楽しいキャラクターでしたね。ウィンク可愛い。
シナリオについてですが、私としては可もなく不可もなく、といった所でした。愛乃は”本物の愛乃が見ている夢”として受肉している存在で、最終的に愛乃自身の決断でその夢を終わらせる(本物の愛乃を目覚めさせる=現実に立ち向かう背中を押す)ことに向かっていく、という話は納得できましたし、いい話だなあ、とは思えました。
ただ正直それ以上の感想が浮かんでこないんですよね。鳥人間コンテストに尺使った都合上からか、2人でイチャコラするタイミングがあんまりなく、関係性が深まったように見えないままお話が終わってしまいました。十分なカタルシスを演出しきれておらず、テーマは面白いけどちょっと物足りないなあというのが正直なところです。
余談ですが、友人がこのルートクリアした後にdiscordに私を呼びつけて(この時点ではこのゲームやってない)、最大限ネタバレに配慮したうえで文句を垂れ流していました。なんの時間だったんだアレ。
ちなみにこの時点で3人攻略して2人消えています。何かがおかしい…?このあたりからもう疑心暗鬼になっていました。
<淡雪陽彩>
淡雪に関してはもう序盤から人間であることを隠そうとしてない。ブルータス、お前もか。
人外であるが故にスケール大きい愛を万物に注ぐ存在でしたが、そんな人外が一人の男の子に恋をしていく過程は、見ていていじらしいというか、可愛らしいなあと思えてしました。母ちゃん、俺、こいつ好きかも_。
話のスケールが壮大で、かつテキストも長大なお話となっていますが、要するにこのシナリオは「”好き”って言葉はすごいのヨ。」ってことを教えてくれるステキなお話だったんじゃないかと思ってます。
最初のエピローグの終盤から、”あったかもしれない世界(泡宇宙)”を数々巡り、つづらや麦との思い出を振り返り、「私はこれでいい(こうでなくてはならない)」という気持ちと、「やっぱり麦に好きって伝えたい」という気持ちの間で淡雪は揺れ動きます。
そこにトドメを指すのは誰か?
お前(麦くん=主人公=プレイヤー)だろ!!!とい制作陣の熱い思い(?)を受け取り、驚異の告白連打。素晴らしい演出だと思いました。
読み応えのあるスケールの大きなお話と、その裏に秘められたシンプルで熱いメッセージ。それらノベルゲーム特有の演出でドラマチックにプレイヤーに叩きつけてくる、完成度の高いシナリオだと思いました。イヤほんと帰ってきてよかった…。
<速川立花>
一言で表すと何とも言えない√。文句を言いたいけど、まあしょうがないよなと受け入れることもできる、なんとも言い難い。
個別√の大半が立花視点から見た麦くん、麦くんにとっての立花(麦くんの内面描写)、そもそもの発端であるスピカとの過去の出会い等に割かれており、麦くんのキャラクターの深堀りという側面が強く、立花というキャラクターを薄く感じてしまいました。
まあシナリオ開始時点である程度関係性が出来上がってしまっているというのと、天下のkeyが妹に手を出すのは流石にマズいというコンプラを尊守した結果だったのかもしれませんが。
ただそれのせいか、「タイムカプセルを開けたら(立花が消えたら)兄さんは死ぬつもりですよね?」が少し唐突に感じました。確かに妹のことになると常識が通用しない感は他√でも描写されていましたが、「お前そんなに限界だったの?」って感じでした。なんかもう少し立花との印象的なエピソードを挟んでいれば感じ方も変わったのかな…?
麦くん過去と内面の描写や、グランド√に向けた謎や設定の回収をするのはいいんですが、作品のコアになる部分にしてはあっさり描写されちゃったなあ、と少し物足りなさを感じたシナリオではありました。
<eternicle>
まさかのスピカ視点でのスピカルートをおさらいする形でスタート。読んだ人は多分全員こう思ったんじゃないでしょうか。
”コイツ(スピカ)、かなり早い段階で完堕ちしてないか_?”
正直かなり笑ってしまいました。一生スピカの脳内でピンク列車が暴走しているのに対し、アウトプットされる言葉が終わり尽くしていて、言行不一致が過ぎるだろとツッコミを入れたくなってしまいました(スキナー曰く言語活動も行動なので誤用ではないと思いますと釈明を入れておきます)。いやホントよくやったよ真澄町の人たち。スピカと麦くん、お互いにクソボケな部分があるわけですが、それを上手くフォローしてくれたと思います。
2人で暮らすようになり、ピザ屋も成功し、モニュメントとして風車を作ったりと楽し気な毎日を過ごし…。
そして描かれるセックス!人差し指をしっかりと伸ばして画面を指差し、外人4コマくらい盛り上がってしまいました。このシーンのスピカは国宝級の可愛さであると断言できます。
先述した友人はこのゲームの話をする時は大体この話しかしません。といっても下世話な話ではなく、友人曰く2人の愛の証左として濡れ場を描くことは必須であり、それによって2人の関係の深さに説得力が生まれるわけとの考えからです。ワイトもそう思います。
そしてセックスからの妊娠→出産。いや早すぎる。河瀬が泣いてるぞ。
まあスピカちゃんは麦くんとの一緒に住むようになってからからもうオールウェイズ排卵日みたいな感じだったのでそうなるか。いやもっと前からそうだったかもしれない。
そしてそういった幸せいっぱいな2人を見ながらこう思うわけです。
「絶対この後よくないこと起こるだろ…。」
まあそうなるんだろうな、と思ってましたがかなり辛い。
ここまで2人のイチャコラを見せつけられた分、辛いのと同時に「ここからどうすんの?!」とこの話に完全に引き込まれていました。今思えば完全に”手のひらの上”でしたね。
そして読み終わると、現れるわけですよ。タイトル画面に速川宅が。そしてその下には”anemoi”の文字。
キ、キモチエ~~~~~!!!
これがこのテのゲームの醍醐味の一つと言っていいでしょうね。
<anemoi/arrive>
完全にやられました。こんなのってないよ…。切ないにもほどがある。
まず麦くんはパパとして本当によくやってくれたと思います。自分の娘に対して愛とは正反対の感情を向けてしまったことも、スピカに対する気持ちを捨てきれず、結果として娘のことをないがしろにしてしまったことも、全部自分のせいだとして背負い込んでいるんですよね。お労しや…。このあたりの描写は少しやりすぎだろ、と思ってしまうくらいでした。よくやった(本音)。
それでも彼は自分の役目を全うし続けた。娘を育て、見送り、そしてそのあとも約束を果たすために、あの場所を守り、待ち続けた。
これをカッコいいと言わずして、何だって言うんだ?
もう一点お話したいことは、このシナリオ、というか個別含めたシナリオ全体に言えることですが、”地に足ついた人間の尊さ”を描くことができていると感じました。
この話何が凄い(凄くない)って、世界の在り様は何も変わってないことなんですよ。麦くんが死んだ後も世界は相変わらず災害に見舞われ続けるし、風の一族としてのスピカちゃんの使命は続くんですよね。いやなんかスーパーパワーで世界の在り方を変えて大団円、と予想してたんですが、大分裏切られました。というかそうであってほしかった。
結局のところ社会(文明)は、麦くんが年を取るとともに発展し、様変わりしていくんですよね。そしてそれらを成したのは超能力を持つ人間でも、人外でもなく、生き残った弱き人々だったわけです。
加えて、穂乃花を育てていく過程で様々な真澄町の人達に麦くんは助けられていくわけですが(他√でも真澄町の人たちは本当にあったけえ)、彼ら一人一人もそれぞれの持ち場で、できること・やるべきことを精一杯やってるんですよね。そういった”地に足ついた人々の尊さと美しさ”というものを、この作品から強く感じました。奇跡も魔法もあるけれど、最後に世界の在り方を決めるのは、小さな人々の小さな力の積み重ねなのかもしれませんね。
そしてなにより、最終的に風の回廊に入る力を失い一般ピーポーの仲間入りをした麦くんという一人の漢が、彼にできることを精一杯やりきる。その人生を賭して約束を果たすために待ち続けるという、”一人の漢の生き様”が私の胸を打ったのだと思います。本当に美しい物語でした…。
でもこうも思うわけですよ。
俺”も”見たかったんだ。
麦くんと、スピカとほのかの3人で、ピザを囲んで幸せそうに過ごしている絵をさ…。
でも、そうはならなかった。ならなかったんだよ、ロック。
この話をハッピー/バッドエンドみたいな評価軸で話をするのは個人的には好きではありません。漢の一生に対してそういった評価はナンセンスだと思うからです。麦くん自身で「こうであろう」と決めたこと、そしてそれを貫き通したことに対して、その結果がどうであれ、我々第三者がすべきは幸不幸の判断ではないと思っています。
ただ今は、一人の漢に最大限の敬意と賛辞を。
”兄さん、ご立派です…。”
【総評】
ここからはゲーム全体の感想です。
まず、女の子が消え過ぎじゃないか?????
4/5人が人外で、残り1人も人ではあるけども…ってなんだコレ。こんなに女の子って消えるものなんですかね?これが普通なのか…?と思ってたらどうやらこのゲームがおかしいようです。よかった。
キャラクターについてですが、全体的にキャラデザの頭身低めでガキっぽいので、始める前はこれといって好みのキャラはいなかったです。
ただシナリオを読み進めて、主人公とイイ感じになっていくのを見ていくと、どのキャラに対しても「俺コイツ好きかも…。」ってなっていく感覚を味わえました。これがこのテのゲームの楽しい所なのかもしれませんね。
シナリオ全体については、ポストアポカリプス的世界観にあって、「人間の温かさ」を丁寧に描写しているという印象を受けました。特にそこに一役買っているのが真澄町の人たち。グランド√の感想でも書いたことですが、彼ら一人一人がその持ち場があって、それぞれがそれぞれにできることを精一杯やっていることが伝わってきます。それゆえに彼らはふとした時に示唆的な言葉を麦くんに投げかけることもあり、それぞれのキャラに厚みがあるからこその説得力を感じます。建築家の人とか立ち絵ないのにいいキャラすぎる。これにはフル・フロンタルもにっこり。
また演出については、特筆すべきは音楽でしょうか。最初は正直好みじゃないというか、落ち着いた辛気臭い音楽ばっかりだな~くらいに思ってましたが、いざって時に流れるとこちらの感度を3000倍くらいに引き上げてくれますね。このへんはやはり天下のkeyの妙技、といった所でしょうか。なんというか、情景を想起させる音楽というか、感情と結びついた音楽というか、そういった上手さを感じました。
総じて、とてもいいゲームと巡り会えたと思っています。ノベルゲームは性に合わないと食わず嫌いしていましたが、激しいゲーム(ランクとか勝敗競ったりするのとか)は最近年のせいかキツくなってきたので、こういったゲームもレパートリーに入れてみてもいいかもしれませんね。
でもこんな気持ちになるくらいならもうやりたくないかもしれない。激しいゲームとは違った側面から感情を揺さぶってくるので…。しばらく食欲なかったもん。いや本当に。
追記:読み返してみると、個別√は冷静に構成の話とかしてるのに、グランド√はもう感情ベースでしか話せなくなってる。まあそれだけ心にくるものがあったんだということで勘弁してください。
以上。おしまい。



